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Japan Patients Association

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第2回難病研究・医療ワーキンググループが開かれました。(5月18日)
「難病の定義」「医療費助成の在り方」などを議論
 *資料は既に厚生労働省ホームページで公表されています。
  http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002aqyw.html

*このメモは私の傍聴メモに基づいて整理したものであり、議論の様子をできるだけ早く伝えることを重視し、私の責任で公表しました。
 細かなニュアンスなどは、後ほど出される正式な議事録を参照してください。                   
                                        (まとめ・水谷幸司)

○冒頭、外山健康局長があいさつし、難病対策の抜本改革にむけて、焦点をしぼった議論を進めてほしいと述べました。
○葛原座長の進行で、4つの論点について、事務局(厚生労働省健康局疾病対策課)より資料説明を受けたうえで議論されました。

以下、出されたおおよその意見を紹介します。

1)難病の定義、範囲について
○事務局からの説明(疾病対策課竹内課長補佐)
・今後の難病対策において対象とする「難病」の定義について議論してほしい。
・これまでの定義としては、難病対策要綱(昭和47年)の定義、難病対策専門委員会最終報告(平成7年)における定義「今後の特定疾患対策の基本的方向」がある。
・この2つの定義は、原因不明、治療法未確立、生活面への支障という点では共通しているが、「希少性」については差が見られる。この点をどう考えるか。
・昭和47年の「難病対策要綱」に基づく対策は8疾患からスタートしている。
・法制化を考えると、疾患概念(外縁)があきらかになっていないといけない。
・また、障害者総合支援法案については現在まだ国会を通っていないが、この法律における「難病等」の対象範囲については健康局、難病対策委員会で検討される難病の定義をふまえて決定されるとしている。
 この政令で定める疾病の範囲をどう考えるか。

○(座長)それでは意見のある方から。
○(伊藤)難病の定義をどうするかについては、これまでも様々な議論があった。定義といっても法律や施策のそれぞれで違っている。そこを整理しないと「希少性をどう考えるか」という問題は見えてこない。
 私は「難病対策要綱」における定義は、当時の社会環境のなかで、福祉も含めた社会的な側面もあわせて定義したもので、先駆的な定義だったと思う。国際的にもそういう評価を受けた。そういう意味ではまずこの定義を、今後の難病対策のなかでも貫くべきではないか。
 医療費助成など個別施策のなかでの在り方については分けて議論をしてもらいたい。「希少性について差がある」というのは差ではなく、定義の目的が違う。特定疾患の定義と難病の定義は混同しないで議論をしてもらいたい。
○「特定」という意味は、時宜にあってその時点で必要なものということ。「難病」の定義とは別ものである。今後の対策における定義としては、希少難病、希少疾患ということでいいと思う。レアディジーズということ。また新しい治療法ができたからもういいというものではない。希少性ということをはっきりさせるべき。
○研究費、治療法の開発に公費を使うことを国民に納得してもらうためには難病一般ではなく、政策として考えた場合には希少難病を集めて治療をするということ。
○(伊藤)介護や経済的な問題の解決という点、福祉的な措置が必要な人たちのことを考えると、希少疾患以外の難治性疾患の人たちにも福祉サービスは必要。また研究ということになると範囲をもっと広くとる必要がある。私は、障害者総合支援法における福祉的支援の範囲については、難病の定義は幅広くとらえるべきと考える。
○希少疾患ということで今回はしぼりこんだ方がいいのではないか。
○単に治りにくいという点でいえば他の(難病でない)病気もある。
 定義としてはあまり広げない方がよいのではないか。
○数の少ない疾患に今後の難病対策は光をあててほしいと思う。
○広くとらえるべきという意見と希少疾患にしぼるべきとの意見。
 どちらの意見も納得できる。法制化を視野に入れた際にどう考えるかという点も必要。難病というと治療法未確立で、かつ日常生活に障害があるということで包括的にとらえることでいいのではないか。
○(伊藤)施策の対象範囲を明確化するためにということで診断基準を明確化するとなると、いま診断方法もわからず困難を抱えている患者を対策からはずすということになる。それでは一体改革大綱での記述とも違うことにならないか。
○(局長)難病の外縁を明らかするにという趣旨は、仮に法制化し施策として確立する場合には、一定の疾患概念がなければ対象を特定できない。法律に基づく事業として展開しにくいということ。難病対策からの除外ということではない。施策の対象範囲としての「希少・難治性」をどうとらえるかということ。義務的に国費を支弁するために法制化をする問題と、総合的な対策の対象については違うものとして考えてほしい。
○疾患概念を漠然と考えたグループがあって、その中で一定の研究が進むと外縁が明らかな疾患とそうでなく残されたものが出てくる。
 最初からきれいな診断基準のものだけとなると、いまわからないものははずれることになる。そこがはずれないようにしなければいけないということ。
○(局長)ここで疾患概念を明らかにしたいとする趣旨は法対象にするものということで考えてほしい。
○(座長)一般的に治らないものまで含むか、あるいは比較的稀な疾患にしぼるべきかという点では、希少疾患にしぼるという人の方が意見としては多いようだ。
○(伊藤)先生方が研究としてまとめられることに異論はないが、このワーキンググループとしてまとめることについては態度を保留させてほしい。
○(座長)厚労省に研究班があるので、そちらでも難病の定義について整理してもらう作業をお願いすることでみなさんのご理解を得たい。
 この研究では国立保健医療科学院の松谷先生が班長で医学的な整理をしてもらうことになっている。
○(事務局)定義のもう一つのテーマである障害者総合支援法における対象範囲についてはどう考えるか。難病対策全般における難病の範囲と、障害者総合支援法の福祉サービスの対象にすべき疾病の範囲についてご意見をいただきたい。
○(伊藤)福祉の対象範囲については広く含めていただきたい。
○同意見だが、難病と障害は本来概念の違うもの。福祉については障害者と認定されれば支援するもの。難病と希少を混同して議論することも問題。整理が必要。
○(局長)身体障害者手帳のない難病患者であっても福祉施策の対象にすべきという議論があって、今回、障害者総合支援法で手帳のない難病患者もあらたなカテゴリーで対象に入れようという議論をしている。このワーキングで大きく定義するのは難病における新法の範囲。
 障害者総合支援法に定める難病の範囲についても、こちらの議論をふまえてということになっている。
○今の身体障害者手帳は障害の固定が基本にある。障害が固定しないで進行、寛解状態の人たちをどうするかということと理解した。
○介護保険の要介護認定も見直しをしている。希少性の疾患をきちんと定義して、対象範囲は幅広いものとすることで見直して福祉サービスは障害者の総合対策で包括的にやられるようにしてはどうか。
○(局長)後ほど論点を詳しく紹介したい。現在、健康局の事業でもやっている(難病患者等居宅生活支援事業)が、対策の売れ行きが弱い。
 真にニーズがある人が受けられていない。認定の方法も違ったものにすべきという議論もある。見直しが進んでいるものも事実ある。
 新しく対象に入れるものについては、範囲や程度についてもわれわれから提示していかなければいけないと考える。
○(伊藤)この法案(障害者総合支援法案)がとおると来年4月から施行となる。疾病という観点から障害者施策に入るはじめての法律となる。その対象範囲をどうするかについて健康局にボールが投げられてきている。その範囲をきちんと決めないと、範囲がきまらないままに施行となってしまう。このワーキングで決めるのかどうかはっきりしてほしい。
○(座長)この点については、どういう問題点があるのか。従来の障害者自立支援法ではどうなっているのか。とくに進行性、変動する場合の障害についてどう考えるか。一方で内部障害については手術したら手帳を出すということになっている。事務局で論点整理をしていただいたうえで次回議論をお願いしたい。

2)医療費助成のあり方について。
○事務局の説明(疾病対策課竹内課長補佐)
 ・現行の特定疾患治療研究事業の目的には「治療がきわめて困難で医療費が高額にある患者の医療費の負担軽減を図る」とされている。
  その対象となる患者の受給者証には「公費負担により受療を促進することによってその原因を究明し、もって治療方法の開発等に資することを目的とする」と書かれている。
 ・この事業の二つの側面をどう考えるか。
  1)症例データを集めることについてどう考えるか。
  2)原則として対象疾患患者のすべてに医療費助成を行うことについてどう考えるか。
 ・この場合「希少性」の要件は必須となるが「患者数5万人」という目安をどう考えるか。外国との比較で見ると海外ではもう少し広めに対象を考えている。
 ・医療費助成とその他の施策について、希少性の要件に差を設けるかどうか。
 ・医療費負担が高額で、現在の高額療養費制度だけでは対策が不十分な人たちの負担軽減をどう考えるか。
 ・がんなど他の慢性疾患患者と比較して難病患者についてのみ医療費助成を行うことをどう考えるか。
 ・医療費助成の基本的枠組みについて一定の基準に基づいて対象疾患をしぼりこむことについてどう考えるか。その際、小児慢性特定疾患治療研究事業との関係をどう考えるか。
   公正性の確保、認定の適正化のしくみ、指定専門医の診断を要件にする、指定医療機関での受診とすることなどについてどう考えるか。
   治療ガイドラインの策定についてどう考えるか。
   他制度との均衡から自己負担の見直しを検討する必要があるのではないか。(食事療養費、薬局での保険調剤費、高額所得者、重症患者の一部負担額など。)

○(座長)そもそも医療費助成について、なぜ特定疾患だけが優遇されているのかという点について。それは公費負担することにより数の少ない患者を病院に集める。そのことにより症例データの集積、診断基準の策定につなげることが目的だった。同時に、長期に療養する患者への福祉的側面という2つの目的があった。
○このワーキングからはできるだけ広くたくさんの疾患を入れるということ以外は出てこない。
○(局長)現在は法律に基づく事業でなく予算事業として実施している。
 また事業名としては「治療研究」が前面に出ている。目的は治療研究と医療費助成の二つだが、少なくとも研究の方は進んでいる。
○医療費助成の目的は、患者の生活が破綻しないように支援していくということ。まずは、患者の生活が破綻しないことを前面に出したうえで制度設計をしてほしい。
○(伊藤)医療費助成のところでは、希少性疾患という概念をきちんととらえることが必要。現在の56疾患を基本に、同じような条件にあるような疾患、患者は対策に入れるべき。他の慢性疾患と比較しての公平性をいうなら、本来は、一般的な疾患患者も含めての医療費負担軽減を医療保険の高額療養費制度の改善でまず行うべき。公平性とは何をさすのか。治療法でしばることや他制度との均衡についても、そういう論の建て方がいいのかどうか疑問である。
○(事務局)公平性、公正性というのは「中間的な整理」のなかで言われている。現在の制度では対象疾患が限られていることでの不公平性が述べられている。今回提示したものはすべて「中間的な整理」のなかでの課題から挙げたもの。
○(座長)難病患者には56疾患は手厚いが他の疾患は見捨てられているという意識が強いから、まず(56疾患以外に)必要なものは拾いあげるべき。(疾患概念が)はっきりしていないものをどこまで含めるか。診断を含めたデータをきちんとするという点では指定医療機関(医師)による診断も必要。等々。そういう点を考えると200くらいの疾患を含めるということになるかと思う。 
○公平性の観点では、他の疾患群と比べた公平性、あるいは難病という疾患のなかの公平性の観点は大事。疾患の重さ、重症度にあわせてどう考えるか。これまでの疾患は、研究者による研究班が定めた疾患だった。もっと幅広い観点から対象を定めるべきと思う。制度としては、本来は治療研究と医療費助成は分けて考えるべき。制度の対象と誰が診断するかということでも改善が必要。
○(局長)350億で現在の事業はやっている。今の予算のなかでのやりくりでということでなく、制度化にあって必要な予算はできるだけ確保したいと考えている。
○その場合には他の病気(の人の対策)と差がないようにと。
○その点では危機感をもっている。必要なものをできるだけと言っても、実際には予算確保は難しいのではないか。一定の診断基準は必要。
 特定疾患治療研究事業は研究よりも福祉的側面が顕著になっておりデータは実質役にたっていない。これをどうするのか。患者への謝金であるとさえ言われており、惰性で医療費助成をしているものは見直しをすべき。
○(伊藤)昭和47年の「難病対策要綱」からは負担の重い患者についての負担軽減をはかることと治療研究に資することを目的にとなっている。
 謝金ではない。また、惰性でやられてきた事業ではなく(患者の命綱として)制度を守るために患者団体がその都度はたらきかけて努力をしてきたことも事実。その点はひとこと訂正しておきたい。
○(総務課長)法制化の観点からすると、やはり目的や範囲についてはしっかり決めないといけない。
○(伊藤)指定医療機関、診断する医師を指定するという点も、希少疾患の場合は、専門医にたどりつけるかどうかが苦労の種。そのことで対象が限定されることにならないか。
○同感。行きつけの医師でも説明できるようになるといい。
○この点は医師の責任で医療者側が解決すべき課題。
○治療ガイドラインというのは一般的な疾患についてが原則。難病にガイドラインを設けるという点はいかがなものか。
○医療者側の立場からは患者みなさんにご理解いただきたい。炎症性腸疾患患者でも、専門医以外の医師がみて悲惨な結果を招く例もある。
 指定医制は方向性としてはいいと思う。患者側にも利便性をすすめるための方向性も法制化で必要と思う。
○重症度に応じてという基準も必要。「難病」という言葉も吟味する必要がある。希少かつ難治ということでよい。
○(座長)ヨーロッパでは医療、介護が社会的に保障されているので、医療費助成や生活支援は問題視されないということもある。(医療費助成は)日本特有の問題ということでもある。今日はここまでにして、次回、議論していただきたい。


3)質の向上のための医療提供体制のあり方(略)
4)難病研究のあり方(略)


○(事務局)次回第3回難病研究・医療ワーキングは6月中旬を予定。

以上


2012年5月21日