全国難病センター研究会 第17回研究会大会報告

 全国難病センター研究会 第17回研究大会は、3月10日(土)、11日(日)の二日間、徳島市で開催され62団体から115名が参加しました。
 現在、国は難病対策の法制化を目指して制度改革をすすめている最中であり、来賓として参加された厚生労働省疾病対策課の山本尚子課長から「難病対策の現状について」と題して約18分の講演がありました。
 
 特別講演では「四国巡礼と病気」と題して四国大学文学部教授の真鍋俊照先生から約40分の講演がありました。真鍋先生は四国霊場第4番札所「大日寺」の住職でもあります。「江戸時代の18世紀ころから四国巡礼が盛んになり、当時から病気を治すことを目的に自然の旅に出る人も多かった。また行き倒れも相当あり、村で葬った。私が小さいときはお寺にハンセン病の人がたくさん来た。その人たちを受け入れて寝かせてあげる。夏になると入りきれないぐらいになり道端には両手を合わせて物乞いをするようにたむろしていた。あるとき親子連れが来た。お父さんは50代半ばぐらい、小さい女の子を一人連れていた。顔は見えない。ハンセン病の方は傷から血がたらたらと出るので包帯を巻いている。夏の夕暮れ時に着いて、小さい子が一杯の水を両手でごくごくと何度も飲む。食事は本当に粗末なものを食べるだけ。その後、眠るのかと思ったらそうではない。小さい女の子とお父さんが一晩中大師堂に向かって手を合わせている。私はそんなことをしても治るわけがないと思った。だけど一晩中祈っている。私はそういうことが信仰なのだと初めて知った」といったお話をされました。絶望の中でも諦めないで純粋に祈る心、これこそが時代を超えて人間が持ち続ける崇高な精神なのだと再認識する思いでした。また、講演で詳しく述べられたわけではありませんが、四国巡礼の歴史には、ハンセン病の人たちの辛く悲しい過去があったことも知っておかなければなりません。
 
 研修講演Ⅰでは「小児肝臓病児と家族への支援 ― 小児科医からみたこれからの課題 ―」と題して済生会横浜市東部病院こどもセンター肝臓・消化器部門の十河剛先生が講演されました。B型肝炎ワクチンはWHOでは、出生した全ての児に接種することを強く推奨しているが、日本はWHOからB型肝炎ウィルス危険国とされているにもかかわらず、B型肝炎ウィルスキャリアの母から出生した児にしか、公的費用でのワクチン接種は認められていないこと。また、原発性硬化性胆管炎(PSC)の肝移植後再発率が脳死肝移植では20%程度なのに対して、生体肝移植では50%以上が再発することが解っている。しかし日本では脳死ドナーが少なく生体肝移植が中心である。しかも脳死臓器提供がPSCに対して優先的に行われれていないなど、主に小児肝臓病をめぐる課題が詳しく説明されました。
 
 研修講演Ⅱでは「痙縮(けいしゅく)の治療について」と題して徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚情報医学講座臨床神経科学分野教授の梶龍兒先生が講演されました。講演の中で、痙縮(けいしゅく)に対するボツリヌス毒素の有効性について、動画を交えて分かりやすく解説していただきました。
 
 一般発表は、テーマごとにパネルⅠ「難病相談支援センター」、Ⅱ「難病患者の災害対策について」、Ⅲ「難病患者を巡る諸問題について」、Ⅳ「就労支援について」、Ⅴ「介護職のたんの吸引について」、Ⅵ「福祉機器(コミュニケーション機器)展示と説明」に分かれて、患者団体、相談支援センター、行政、研究者などが発表を行いました。
 
 初日の夜は阿波観光ホテルで参加者交流会が開催されましたが、地元で活動する「藍ふぶき」の皆さんに洗練された阿波踊りを披露していただくなど、たいへん楽しいひと時でした。
 また、2日目(3月11日)は東日本大震災の発生からちょうど1年になることから、会場では地震発生の2時46分に合わせて黙とうを行い、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りしました。
 運営委員会では全国難病相談・支援センター連絡協議会の設置に向けた意見交換が行われるなど、難病対策の拡充に向けて全国難病センター研究会と共に難病相談・支援センターの役割が重要視されていることを実感する大会でもありました。
 その他、協賛企業より意思伝達装置などの福祉機器及び咀嚼力が低下した方でも食べる食品の展示、説明などがありました。また、ロビーでは絵画展が催され、日本ALS協会会長の長尾義明様(徳島在住)がご自身の足で描かれた絵が展示され、参加者の目を引き付けました。長尾様は大会にも参加され「在宅療養における介護職等によるたん吸引等の拡充について」といった演台で一般発表もされました。
 
 このように四国では初めての開催となった第17回大会は、地元とくしま難病相談・支援センターから30名以上が参加いただき大会を盛り上げていただいたほか、たいへん地元色の豊かな大会でした。
                                            (文責 日本難病・疾病団体協議会 藤原 勝)


                                                               
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